犬の食事とライフステージ
みなさんの愛犬のライフステージはどの段階ですか?
愛犬の食事はライフステージや体の状態に合っていますか?
今回は、ライフステージと食事について、そしてライフステージに合わせた食事が大切な場合について解説します。
愛犬が今どのライフステージなのか把握し、よりよいワンライフを提供しましょう。
犬のライフステージ
ライフステージは、人間の場合、幼少期や学生の時期、就職、結婚、退職のように、人生の大きな節目によって分類されることもありますが、犬の場合、体の成長や妊娠、老化のように、身体の変化によって分類されます。細かく分類される場合もありますが、ここでは、子犬、成犬、老犬の大きく3つに分けて解説します。
犬は犬種によって寿命が異なることもあり、すべての犬を対象に年齢でライフステージを分類することはできません。ライフステージは子犬と成犬の間のように曖昧な時期もありますが、愛犬のライフステージの分類は、その段階に応じた生活環境、食事、予防の判断に役立ち、愛犬のよりよい生活の提供につながります。
<子犬>
成長期です!多くのことを経験し、学ぶ時期です!さまざまなことを吸収するとても大切なステージです。
成犬の時期は体を維持する食事が必要ですが、子犬の時期は維持だけでなく成長するための食事も必要なため、各栄養素の必要量は多くなります。例えば、骨について考えてみましょう。骨はカルシウムやリン、マグネシウム、コラーゲンなどで構成されています。子犬の骨が大きく成長するためには、食事にカルシウムをはじめとした骨を作るために必要な材料が十分に含まれなければいけません。多くの犬はわずか1年で成犬のサイズに成長します。人間と比べるとすごいスピードで骨も成長します。子犬と成犬では栄養基準が異なり、子犬のカルシウムの必要な量は、成犬の時期の2倍以上です。子犬の健やかな発育のためには、カルシウムをはじめとした多くの栄養素が十分量必要です。
子犬の時期は犬同士の関係を築くために、犬とコミュニケーションをとりながら学んでいきます。また、人間社会の中で暮らしていくために、リードに慣れたり、トイレを覚えたり、多くのことを学ばなくてはいけません。よい行動は褒め、不安を感じている場合は不安を取り除き、悪化させないような取り組みも大切です。
遊びや学びの一環として、多くの冒険を行う時期ですが、それは時に危険で事故につながりかねません。中毒を起こしてしまうようなものを食べないように、おもちゃなどを飲み込んでしまわないように、コードを噛んで感電することがないように環境の整備も行いましょう。
歯磨きのトレーニングはこの時期から開始し、習慣化するのがよく、これは歯周病になって痛みが生じてから始めるのは難しいためです。また、歯磨きのトレーニングがうまくいくと、口を開けたり閉めたり口の中を触ることができるようになり、長い犬の生涯の中で、病気による投薬や食事の介助が必要になった際に、とても役に立ちます。歯の生え変わりで痛みを伴うときは歯磨き嫌いにならないように注意して行いましょう。
子犬の時期はさまざまなウイルスや細菌との接触、そしてワクチン接種によって、免疫力を高めていきます。子犬の病気予防のため、そして私たちと一緒に生活をしていくためにも、ワクチン接種や寄生虫の駆除、適切な食事管理は重要です。犬と人間と共通の病原体(人畜共通感染症)によって、愛犬からご家族、特に免疫力の弱い幼い子供や高齢者へ病気が感染することがないようにしましょう。
パピークラス(子犬をパピー(puppy)といいます)を行っている動物病院もあります。子犬のトレーニングや健康管理に必要な情報の提供を行っています。かかりつけの動物病院に相談してみましょう。
<成犬>
体の成長が終わり安定した時期です。子犬のような高い栄養要求はありません。ただし、妊娠、授乳の間はお腹の中の胎仔、授乳中の子犬を育てるために栄養要求が高まり、母犬自身の体を維持する量と子を育てる量が必要になります。
成犬の時期をよりよい状態に維持させるためには、日頃のケアがとても大切です。適切な食事や運動、歯のケアなど体の手入れのほか、動物病院で定期的に健康診断も行いましょう。定期健診は、隠れた病気があれば早期発見につながり、愛犬が健康な際には愛犬の基準値の指標となります。検査の各項目には犬の基準値がありますが、健康でもこの基準値を少し外れる場合があるからです。もちろん、その時点で異常の場合もあり、獣医師が他の検査と合わせて問題かどうかを判断します。
成犬の時期は若さあふれる時期からシニアに入る時期まで長く、病気が見つかる(始まる)場合もあります。愛犬の変化に応じて食事や運動、環境を見直した生活を提供しましょう。
<老犬(シニア)>
体のさまざまな機能が衰える時期です。目が見えにくくなり、耳が遠くなり、関節がこわばり、今までできていたことができなくなっていきます。病気を抱えることも多くなり、複数の病気と闘わないといけない場合もあります。目の病気は多く、全く見えなくなってしまう場合もあります。見えなくなっても懸命に食事を探し喜んで食べ、抱っこやカートでのお散歩で風を感じ心地よさそうにし、シニアになっても精一杯生きるその姿は非常に心を打たれます。
この時期の食事は成犬の時期とは変えた方がよいと考えられますが、シニア専用の栄養基準はありません。シニアの程度には個体差があり、またそれぞれが抱える疾患の種類も数も異なるため、すべての老犬に合った栄養基準を決めることは難しいと考えられます。
私たちにできることは、動物病院で定期的に検査を行い、必要に応じて投薬や栄養管理、ケアを行い、愛犬の状態に合わせた環境に整えてあげることです。腎臓病と関節炎を併発しているのであれば、激しい運動は控え、タンパク質やリンの量を抑えた腎臓に配慮した食事を選び、フローリングで滑ることがないような対策が必要です。視力や聴力の低下から、急に触ると驚いて咬みついたり不安を覚えたりするかもしれません。嗅覚や触覚など残された感覚を利用して怖がらないように対策を取りましょう。
犬の総合栄養食の基準とライフステージ
ペットフードの表示に関する公正競争規約では、総合栄養食は「毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフード及び水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたもの」であり、その表示には犬の成長段階を併記するように定められています。この規約の施行規則には、その成長段階の例として、成長期や成犬期、妊娠期/授乳期などが挙げられています。この中には、全成長段階(オールステージ)の例もあります。総合栄養食の基準にはAAFCO養分基準という米国のペットフードの基準が採用されており、このAAFCO養分基準には、成長期と妊娠・授乳期(Growth & Reproduction)と、成犬期(Adult Maintenance)の2種類の基準があります。前者は体が成長する子犬のため、そしてお腹の中の胎仔や授乳中の子犬を育てる母犬のための栄養要求量が高い時期の基準です。後者は体の成長が終わり、体を維持する成犬の時期の基準です。全成長段階(オールステージ)の総合栄養食は、この両方の基準を満たした食事です。
成長期と妊娠・授乳期のAAFCO養分基準は、子犬の成長のためにタンパク質やビタミン、カルシウムなどミネラルの必要量が多く設定されています。小さい胃の容量の幼犬のため、また妊娠時に多く食べられない母犬のため、少ない量でカロリーが採れるように脂質量も多く、エネルギー密度の高い食事です。タンパク質や脂質が多く、嗜好性の高い食事でもあります。食べ過ぎて太っている場合、病気を持っている場合など、健康状態によっては控えた方がいい場合もあります。食事が適切かどうか心配な際は動物病院で相談しましょう。
ライフステージは、各ステージで体の状態や栄養要求量が異なります。愛犬のライフステージとは異なる段階の食生活や無理な運動は健康を損ねるかもしれません。よりよい健康のためには、愛犬のライフステージを把握し、そのステージに合わせた生活を提供しましょう。
みなさんの愛犬はどのライフステージですか?食事はどのようなタイプですか?愛犬のライフステージや健康状態に合っていますか?愛犬と一緒にドッグフードのパッケージを確認してみましょう!
犬のライフスパンはヒトより短く、1年でおよそ5歳ずつ年をとるといわれていますが、子犬の時期はさらに早く、1年で20歳前後も年をとります。高齢になると寝ていることが多くなり、時間がゆっくり流れるように感じますが、1日1日年をとっていきます。愛犬との毎日を大切に、美味しく楽しく過ごしてください。